「終わった人」橋下徹の首相待望論をブチ上げるプレジデント本誌が導く永田町百鬼夜行
【連載】「コップの中の百年戦争 ―世の中の不条理やカラクリの根源とは―」
■必ずしも全国の有権者には好意的に受け取られていない
そういう状況で、橋下徹さんを総理に待望論をブチ上げる記事が出るってのは妙なんですよ。実際、誰も期待してないですからね。そもそも、文春がやってる恒例の『総理にしたい政治家』アンケートでは、橋下徹さんは8位以下ですし、大手マスコミが予備調査でやる期待する政治家(記名式)にいたっては圏外です。よく見ると東国原英夫さんより下になってて、支持者が少ないというより橋下徹さんを嫌っている人が多い印象です。シンクタンクで期待する政治家や評論家を調べることは多いですが、何度やっても橋下徹さんは著名だけど支持はマイナスなんですが、刺さる人には刺さるってことなんでしょうか。元政治家としてテレビに出ている芸能人の扱いであって、調査結果を見る限り世論において橋下徹総理待望論なんてネットにいる旧大阪維新時代からの支持者が騒いでいるぐらいなのかなと思います。
それもそのはずで、大阪維新で旋風を巻き起こし、元東京都知事・石原慎太郎さんを共同代表に迎えて国政に打って出た橋下徹さんはそこから期待感は急降下。最後は2015年の大阪都構想のチャレンジは敢なく失敗に終わって一端は政界引退を余儀なくされたんですよ。もちろん大阪都構想はナイストライでした。が、逆に大阪府民に聞きたいんですけど、大阪府知事が橋下徹さん、松井一郎さん、吉村洋文さんと、2008年から足かけ13年大阪府を橋下さんから維新の会へと続けてきて、果たして大阪府の暮らしは実感として良くなったんでしょうか。
大阪に本社を持つ企業は増えたのでしょうか。大阪での賃金は増えましたか。大阪は住みやすいですか。参考にするかどうか微妙なところではありますが、日本総合研究所の『都道府県幸福度ランキング』を見てみますと2018年度までずっと大阪府は下位を低迷し、総合幸福度で43位、政令指定都市としては大阪市が栄えある20位でドベであります。大阪府民、為政者に厳しすぎるだろ。もちろん、ここでいう「幸福度」はあくまで傾向値であって、府政、市政の成績そのものではないにせよ、本調査が刊行された12年版以来、42位、43位、44位と90年代の阪神タイガースもかくやという暗黒状況になっているのは特筆するべきところです。もはやオマリーとパチョレックを知事に担がないと駄目なのではないかとすら思います。
『都道府県「幸福度」ランキング2019【完全版】』
https://diamond.jp/articles/-/220931
維新の会の支持の構造において、右派系野党としてすでに多くの政党支持・有権者の行動分析はかなり行われており、中でも『維新支持の分析 — ポピュリズムか,有権者の合理性か』(善教将大・著 有斐閣・刊)はほぼ維新の支持状況に関する決定版とでも言うべき内容になっています。政策の支持動向や政策分析に関心のある方からすればまさに必携の書です。
維新の会の支持層からすれば、維新の会を支持するのは維新の政治家や(主に地域に対する)政策が良いとするものです。橋下徹さんが政治的な動きをすればするほど基本的には維新の足を引っ張るだけの存在になり果てていることが数字的に明らかなんですよね。もはや「維新の橋下徹」ではなく、著名で実績のある元政治家で、お茶の間でおなじみの橋下徹ぐらいのノリです。
『維新支持の分析』(有斐閣)
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641149274
【書評】有権者の態度を読み解く『維新支持の分析』の迫真度 – やまもといちろう
公式ブログ https://lineblog.me/yamamotoichiro/archives/13218154.html
この中で問われているのは、いまや旧「大阪維新の会」を創設した橋下徹さんのリーダーシップや個人に対する期待感は特定の維新支持熱狂層のみにしか届いておらず、むしろ現「維新の会」で見るならば橋下徹さんが出てくれば出てくるほどマイナスで、橋下徹さん本人の政治勘の鋭さや、未練混じりの政治時評は必ずしも全国の有権者には好意的に受け取られていないどころか、大阪府の有権者ですらもそのアイコンに対して賛否両論の深刻な対立状況に陥っていることです。それもこれも、橋下徹さんの優秀さや発信力の強さと同時に表現・存在のドぎつさと、大阪府が抱えた特有の閉塞感、さらには在阪マスコミによる恒常的な橋下徹ヨイショが本来政治については選挙前ぐらいにしか考えることのない有権者にいちいち是非判断を突きつけるあたりに満腹感を持たせている可能性は否定できません。
確かに、2012年の週刊朝日による『ハシシタ』なる橋下徹特集において、ジャーナリストの佐野眞一さんと週刊朝日取材班(今西憲之さん、村岡正浩さんら)が橋下さんの出自を被差別問題に重ねてしまい問題となるなど、橋下さんが目立つがゆえに酷い足の引っ張られ方をして国政進出についてはおおいに阻まれたのは不幸であったとは思います。
橋下徹さんも大阪土着の地域政党から全国政党への脱皮を行い国政にしっかり進出するプロセスを踏もうとしたところで数々の妨害に遭い、また、都知事就任前は自由民主党時代でも群れることのできなかった孤高の有力政治家・石原慎太郎さんの存在感をスイングバイに使って飛躍を狙った橋下徹さんのセンスと行動力は素晴らしかったのは間違いないのです。
【全文】
石原慎太郎氏「維新の会」分党会見 「橋下徹氏と目的は同じだが、登る道が違う」
http://logmi.jp/13718
しかしながら、橋下徹さんの王道政治家としての歩みが閉ざされるのは、まず『週刊文春』2012年7月26日号から掲載が始まった橋下徹さんの不倫&セックススキャンダルです。これで、大きく女性支持層からの離反を招き、またマスコミからの好意的な報道がかなり減少してしまいます。さらにその後、鬼門中の鬼門である2013年当時の「従軍慰安婦問題」に関する失言で決定的な状況になりました。
『大阪の元愛人だけが知っている「裸の総理候補」 橋下 徹大阪市長は スチュワーデス姿の私を抱いた!』
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/1593
『慰安婦制度は必要だった』
https://www.jiji.com/jc/d4?p=gaf928-jlp14540092&d=d4_int